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見える化

UPDATE

2018.12.13

久しぶりにプロジェクトの一環で救急隊へのヒアリングに訪問した。

経営改善と言えば、救急や紹介/地域連携など患者獲得ルートに係る改善課題はよくあることだが、ヒアリングで救急隊への訪問は何年振りかなという感じであった。

今回の地域の救急は、おそらく全国でもそうであるように「無駄な出動回数の減少、救急車の適正利用」と「収容時間の短縮」を課題として取り組んできた。前者は、公的医療機関の救急車を新たに配置し(地域病院救急車)、施設から急性期への急変転院などのケースでは、極力救急車を呼ばず、この地域病院の救急車の利用を促している。実際利用件数の増加に伴い、救急車の出動回数も抑制されているようだ。

後者の「収容時間の短縮」については、病院への収容時間が長くなる要因の一つに、受ける医療機関側の院内たらい回しがあった。要は、病院が電話を受け、受入れの可否を院内で交渉、調整をするのに時間を要し、その結果受入れOKならばまだ良いのだが、断られるケース。救急隊としては、すぐ次の受け入れ先を探さなくてはならないので結構なタイムロスとなっている。あたりまえの話である。

この院内たらい回しによる断り削減により収容時間短縮を目指した取り組みとして“見える化”を実施している。どういうことかというと、ある患者Xが救急車で搬送される。救急隊はA病院に収容依頼をするが、A病院は断る。次にB病院に収容依頼をする。B病院で受入れが決定し搬送される。そうすると、搬送患者Xの受入れに関与したA病院とB病院は、WEB上でA病院●●の理由で受入れ不可、B病院収容という感じで履歴を追うことが出来るようになっているのだ。実際、断った側は、最終的にどの病院が受け入れたかを結構気にして閲覧するらしい。蓄積されたデータも病院にフィードバックされる仕組みだ。この断り・受入れの事実を見えるようにすることで、実際の断りは大幅に減少し、もともとの目的であった収容時間の短縮は、一定の成果を上げているという。この“見える化”は、単に数値が見えるようになっているのではなく、明確なメッセージが存在している。今後の色々な取り組みの参考になりそうだ。

坂尾英明