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“在宅復帰と排泄動作”~老人保健施設の事例より~

UPDATE

2019.10.11

入院基本料が細分化されているように、老人保健施設も基本型・加算型・強化型・超強化型など在宅復帰支援状況などの違いにより細分化され、当たり前だが上位基準に格上げすると収益が向上するようになっている。しかし、上位基準を取得することは決して容易ではない。上位を目指す際、ベッド回転率などクリアすべき基準がいくつかある中、在宅復帰率がハードルになる施設も多いであろう。在宅復帰率を一定以上維持するために、在宅に帰れるようにしっかり回復させる(回復力向上)、急変入院を減らすよう手厚いケアを行う(急変入院抑制)など、とにかく在宅へ帰す(非在宅を減らす)ように頑張るのか、入所時に在宅へ帰れそうな人を入所させる(入所コントロール)のどちらかである。

 

実際、老健などは入所時と退所時の状態に大きな変化は見られないようで、“入所コントロールが大事!”“選んで取る”などの声もよく聞くが、実は入所後の維持期リハが大事なのである。もちろん環境面によって在宅に帰れないという利用者も存在するが、それ以外、身体の状態で在宅へ帰った利用者と非在宅の利用者の違いを確認すると、実は排泄関連の動作の違いが大きいことがわかる。具体的には、FIMのスコアの違いであり、トイレ動作・排尿管理・排便管理・移乗トイレなどの項目である。つまり、在宅復帰する利用者は、そうでない利用者と比較すると圧倒的にトイレ関連のFIM利得(入所時と退所時の差)が大きいのである。トイレに行けるかどうかは在宅復帰するためには非常に重要なファクターとなっている。

 

一方で、当該施設はそれらの訓練を充実させていたかというとそうでもなく、大体週1回の訓練があるかどうかであった。今後重点的なリハビリが在宅復帰率の維持安定化に寄与することを示唆している。なお、色々調べていると、近年これらに着目したリハビリを集中的に実施するプログラムもあるという。

 

老人保健施設のように維持期リハビリでは大きな改善は見込めないという声も聞こえてきそうであるが、このように在宅復帰率の維持向上に向け、入所コントロールではなく、日常動作レベルを上げていくことにチャレンジすることは素晴らしい取り組みだと思う。

坂尾英明