STAFF EYE'S

スタッフアイズ

STAFF EYE'Sスタッフアイズ

本当に人は足りないのか?

UPDATE

2020.02.27

「忙しいから人を採用して欲しい」これは医療機関でよくある話である。ある病院の看護部において、一部の病棟が忙しすぎて、多くのスタッフが残業をしているという状況があった。職場満足度調査(看護協会で実施しているインデックス調査)によると、この病院は残業が多いことが職場の満足度を下げているというような結果も出ていた。世の中的にも働き方改革が進んでいるように、何とかしなければということで当該病棟の師長が悩んでいた。看護基準で一定数の配置がある中、簡単に採用は認められない。なんとか残業を減らせないかと色々考え、残業時間に何をしているのかを把握してみた。 残業のほとんどは日勤帯看護師で半数の看護師が1時間以上の残業をしている。長い人で2時間を越えるケースも存在している。その時間にやっていることは、概ね、看護記録や病状説明記録、他メンバーのヘルプや翌日の点滴確認など、緊急性や優先度が決して高いとは言えない仕事だったのである。

残業が起こる理由は日勤帯に発生する突発的で優先度の高い業務に対応しながら、それらの仕事が落ち着いてから、上記のような後回しにした業務を行うことにあった。もちろん次の勤務者にお願いするということも出来ないわけではないだろうが、個人の責任感によるところもあり、夕方以降に人の配置が手薄になる中でなかなかお願いしにくいというのが正直なところであろう。

結局、タイムスタディを実施したところ、人の配置が業務の波と合っていないのである。配置人員は、早出・日勤・遅出・夜勤といった具合でシフトが組まれており、最も配置が厚い時間帯は7:00~16:00となっている。一方で、業務の波は、午前に予定入院の一次ピークがあるが、お昼以降は、手術戻り患者やインフォームドコンセント、緊急入院患者対応など、15:00頃からこれらが重なり16:00~17:00にピークを迎える。つまり、仕事のピーク時にスタッフの入替が起こり、更に配置される人員も減少していくという訳である。これでは日勤帯の勤務者は残業止む無しであろう。

この病院の病棟における人材不足感・残業時間削減の答えは、仕事の波に合わせて勤務形態を組み直す!という非常にシンプルなものであった。生活に合わせた勤務形態でなく、業務に合わせた勤務形態にすることである。もちろん、どの医療機関でも通常実施しているであろうが、看護師でなくても出来る仕事を他に振ることや業務自体の無駄を省く取り組みを行うのは言うまでもない。

坂尾英明