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外部だからこその強み(外来現場視察を通して)

UPDATE

2020.10.12

先日ある病院の外来の現場視察をした。その病院では外来の補助職員(看護師)が非常に多く、どうしたら減らせるか?ということに取り組んでいた。その過程で現場を査察し、スタッフの声を聞く運びとなった。

仮説的には「看護師の処置等の業務はそれほど多くない。故に、各診療科に配置されている看護師はそれほど忙しくない。つまり、減らす余地はある」という風に考えていた。実際現場を見たところ半分は当たっており、半分は違っていた。

当たっていたことはなにか?「それは看護師ならではの業務はそれほど多くない」ということ。具体的には、急変患者のバイタルチェックと整形や外科の処置。処置も毎回あるわけではなく10人に3人くらい。急変患者も毎回いるわけではない。つまり、看護師ならではの業務は非常に僅かということである。看護業務のみに集中すれば、全診療科合わせても、どんなに多く見積もっても5人くらいで良さそうだ。

では何が間違っていたか?それは「処置が多くないからそれほど忙しくないのでは?」という部分だ。正直現場の看護師はかなり忙しそうだった。処置がないのに何をしていたって?「電話対応」、「カルテ受け渡し」、「患者呼び込み」、「予約の確認」等。一言でいうと事務仕事だ。特に電話に関しては院内、院外からの問い合わせが常に鳴りやまず、常に2人の看護師が(私が目にした最大時は5人・・・)が電話対応に追われている状況だ。つまりは、この病院の外来は看護業務のプロを大量に配備し、彼女たちに医者の秘書の仕事をやらされているのだ。現に現場看護師の言葉には、「優秀な外来看護師の条件は医者のクセを覚え、各科のルールを理解し、先回りし、卒なく書類仕事をこなすこと」とハッキリ言っていた。まさしく、優秀な秘書の条件だ。

現場の看護師から直に聞いてみると、多くの看護師が現状の事務仕事の多さ、電話対応の多さに不満を抱えていた。「看護師ならではの業務に特化したい」という声も多かった。多くの看護師が現状に問題を感じていた。ここで疑問に思うのが、現場の皆が問題に思っているのになぜ今まで改善がなされなかったのだろうか?ということだ。

一つは「問題の表現の仕方というスキルがない」こと。伝え方しかり、資料の書き方しかり、数字の見せ方しかり、「現状はこうで、こういう問題があり、改善する必要がある」と提言する術を持たない(教育を受けていない)ということが考えられる。

もう一つは、こちらの方が本質なのかと思うが、内部の人間では見えづらい/言いづらいのだ。「自分は、変だと思うが他の事例を知らないし、もしかしたら変なのは自分なのかもしれない」「周りは何だかんだ従っているから、わざわざ言わない方がいいのかもしれない」といった同調圧力のようなものが発生する。みんなモヤモヤ感を抱えながら、改善はされず、働くこととなる。

そう考えると、外部の人間だからこそハッキリ提言できることが、やはりコンサルタントの強みなのかと思う。現にヒアリングをした看護師の皆さんからは多くの意見を頂き、同時に現状の改善お願いされた。看護部長からもヒアリング前と後で看護師の顔色が明るくなったというお言葉も頂き、文字通り現場のスタッフの期待を背負うこととなった。責任重大だが、正直コンサル冥利につきるというものだ。「コンサルは数字でしか理解しないよね」という言葉をたまに聞くが、それだけで終わらないのが弊社のコンサルティングである。私自身がその大切さと、「現場との対話することの楽しさ」を再認識させられた非常に良き現場視察であったように感じる。このような機会を与えてくれたクライアントに感謝し、改善に進んでいきたい。

井上和樹