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楽しい改善の進めかた

UPDATE

2021.08.26

前回は看護業務改善における記録の効率化の意義についてお話した。今回はその関連になるが、看護業務が増える仕組みについてお話したい。

いくつかのクライアントの業務改善の支援をするうちに気付いたのだが、業務改善により看護師の業務が増える一定の法則があるらしい。

それは、『見えないものへの恐怖に対してとにかく量で対抗する』である。

 

例えば

①記録の記載漏れが起きた

②誤薬事故が起きた

③患者へのバイタルチェック不足が起きた

といった問題が起きたとする。

ここでの対策が分かれ道である。

業務改善によって仕事が増える組織は、これにとにかく量で対抗しようとする

①とにかく多くの記録を書く。検温版に書いてある正常数値もしっかり細かく記載する

②電子カルテだけでは不安だから薬剤管理の紙書類を増やす・ダブルチェック/トリプルチェックも増やす

③どの患者にも検温は基本4回。内容も全て問診・体温・血圧・SPO2・・・全て実施

そうすると当然仕事は増え、忙しくなる。

それだけではなく、問題の根本が解決していないために似たような問題が起きる。そこでまた、量を増やし対抗する。忙しくなることで新しい問題が起きる。更に別の業務においても同じように量で対応しようとする。結果、業務改善するたびに業務が増え、スタッフのモチベーションもどんどん下がっていく負のスパイラルに陥る。

 

ではどのような改善が良いのか。私が提案したい方法は、『見えないものを整理して、よく見えるようにし、問題を狙い撃ちする』である

①漏れてはいけない記録項目を洗い出し、チェックリストとして記載可能にしよう

②薬剤管理書類を簡素でわかりやすいものにしよう

③患者の疾患や容体など、状態ごとに実施することを一度整理して、電子カルテ上で確認できるようにしよう

そうすると業務は増えない、むしろ今まで余計なことをしていたことにも気が付き、修正することで全体の業務量は減る。

それだけでなく、問題の根本が解決しているから同じ問題は起きにくい。

業務改善によって余裕ができた時間で更なる新しい業務改善ができる。スタッフも仕事が楽になり、どんどん改善へのモチベーションが上がる正のスパイラルとなる。

 

見えなくて不安だからとにかくたくさんやる(弊社では足し算の業務改善という)から、見えなくて不安だから、ルールを決めて見えるようにし、余計なことをなくす(こちらは引き算の業務改善)へ。

 

業務改善とは自分のペースで仕事を進めていくためのものであり、本来は楽しいことだと思う。

しかしやり方を間違えてしまうと、辛く苦しいものとなってしまうため、正しい方法で楽しく改善したいものである。

 

井上 和樹