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フォーミュラリーはなぜ普及しないのか

UPDATE

2022.04.28

2022年度診療報酬改定で新設された加算、見直された加算などあると思うが、たびたび次回の改定で新設されるのでは?と話題に上がっている加算の一つに「フォーミュラリー」がある。フォーミュラリーとは「医療機関等において医学的妥当性や経済性等を踏まえて作成された医薬品の使用方針」(厚生労働省)とされている。

次回の改定で加算が新設されるかもしれないと聞き、セミナーに参加したのは3年前であったが、ご存知の通り今年度の新設でも見送られた。

今朝のニュースにも「地域フォーミュラリー、標準的手法を確立へ  厚労科学研究・第2弾、来年度初旬にも成果まとめ」(日刊薬業朝刊メール・2022年4月28日)とあり、フォーミュラリーを推進すべく動きが取られているが、普及は進んでいない印象を受ける。何が要因し普及が進んでいないのか。

 

そもそもフォーミュラリーは院内フォーミュラリーと地域フォーミュラリーと2つある。いずれも薬剤師が相当な時間をかけて調査し、提案をまとめ、医師等に意見をもらいながら院内/地域の使用方針としてまとめあげるものになる。

薬剤師の労力がかかる業務であり、加算がついていない状況下で推し進めるのは難しい側面があることは容易に想像できるわけだが、厚生労働省の調査でもその実態が表れている。

上記にもある厚生労働科学特別研究事業での研究(2020年度)ではフォーミュラリーを作成した病院は約15%程度(831施設中121施設が作成)であり、作成ができていない理由で最も多かったのは時間・人手不足であった。

また、同調査で地域フォーミュラリーの運用開始前の懸念材料として最も多かったのは「医師が自由に処方できなくなりそうだ」であり、他にも経済性の観点から後発品が第一選択薬に選ばれることの抵抗を感じている医師も一定数いるようである。普及には医師の協力/理解を得るのが不可欠と言える。

 

一方で、薬剤師は需要が供給を上回り、2045年には少なくとも2万人ほどが余剰になるという試算も出されており(薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会2021年4月26日)、今後の薬剤師の役割/業務は注目されるだろう。

その中で、診療報酬で加算がつくようになるのはもう少し先のこととしても、薬剤師の業務にあるDI(医薬品情報管理)の延長として今後フォーミュラリーの作成/管理業務を追加する病院が増えてくるかもしれない。

 

フォーミュラリーの作成にあたっていきなり広く始める必要はなく、まずは先行事例が多い降圧薬から始めるという方法でもよいと思う。

試案である地域フォーミュラリーの作成ガイドラインでも、欧米が公開しているデータを基本資料とし、フォーミュラリー作成に利用することを案として提示している。

先行事例を踏まえ検討すると、採用状況/使用状況によっては簡単に第一選択薬を決められる医薬品があるかもしれない。

加算の新設が決まる前に薬剤部単位でも一度シミュレーションをしてみてはいかがだろうか。

 

花井 聖菜