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問題解決型病院を目指して

UPDATE

2021.02.25

これまで何度か紹介しているが、弊社サービスの教育研修プログラムに「問題解決能力向上」の研修がある。この研修は、講義・ケーススタディ中心の“基礎編/応用編”から自分で課題を設定して改善活動を行う“実践編”と問題解決を段階的に学べるようになっている。特徴的なのが後者の“実践編”であるが、今期もいくつかの医療機関で実施した。通常の経営改善のコンサルティングの中で抽出される課題とはまた違った、現場ならではの課題が取り上げられる為、講師である自分自身にとっても非常に勉強になる機会となっている。そこで、今回の研修の中のテーマでいくつか興味深いものを以下に紹介する。

 

内服関連のインシデント削減(看護部)

~ダブルチェックは古い!シングルチェックへの回帰~

病棟における誤薬等の内服関連のインシデントの削減に向けた活動。よくある課題ではあるが、割と解決策が通り一辺倒でインシデントが減らないという施設も多いのではないか?この取り組みは、一般的にはダブルチェックなどチェック機能の強化を図るのが主流となっている中、ダブルチェックによる弊害(マンパワーや責任感)を問題の所在と捉え、敢えてダブルチェックを廃止し、シングルチェックによるインシデント削減を実現した。

 

重症度、医療・看護必要度の維持・向上(事務部)

~多くの算定漏れ・行為漏れの発生。強い医事課づくり~

入院基本料の維持に向けた取り組み。こちらも医事課の一つの業務としては定番中の定番。ゼロベースで考えれば、「当該患者を多く受入れる」や「ベッドコントロールによる当該患者以外を転棟/退院させる」など重症度割合を高めるという方法は計算上あるのだが、今回のフォーカスは、毎月、即効性が求められる活動のため、医師や看護師などの医療者への教育をしながら、算定漏れや行為漏れを徹底的に解消する取り組み。毎月10日刻みでモニタリングを実施し、心電図モニターや救急管理加算の算定強化などを実施した結果、基本料Ⅰを維持するだけでなく、重症度患者の割合増加(患者数は一定)により、年間数千万円規模の増収を実現した。

 

看護パワーの最大化

~病棟新人看護師の早期戦力化の実践~

毎年新人職員が入ってくる中、体系化された教育プログラムにおいて、新人看護師教育委員会(先輩看護師により構成)は多くの時間を教育研修に費やしている。早期に夜勤に入れることを期待し、教育委員会では、技術習得項目と評価軸を設定し、年度初期に集合研修を開催後、一定期間内に現場教育/OJTで習得する(一人で出来るようになる)ことを要求するのだが、この技術習得の評価を時系列で、定量的に把握すると、とにかく習得のスピードが遅い。これは数の上では看護師一人となっているものの、そのパフォーマンスは一人分以下であり、実質的なマンパワー不足と捉えられる。このようなことがなぜ起こるかというと、それぞれの病棟において、現場教育にふさわしい環境が無かったり、環境があっても機会を与えていないなど様々。この提供側の問題を指摘し、新人看護師の早期戦力化(一人前)を実践している。

 

このように、今期もまた病院スタッフに問題解決スキルを学んでもらいながら色々な問題解決を実践した。この活動を定着させ、日常的に問題解決を実践する“問題解決型病院”を数多く創り上げたい。

 

坂尾英明