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研修効果を何で測っていますか?コンピテンシー評価を用いた看護師長研修のご紹介

UPDATE

2021.04.08

日本病院会が実施した、病院が医療人材確保と育成に係る費用(研究費、研修費、福利厚生費、諸会費、寄付金)の調査結果(平成30年)を見ると、その費用は医業費用総額の 1.52%であったと報告されています。一方、産労総合研究所の調査(一般企業)では、社員1人あたりの年間研修費は35,000円程度と報告されています。いずれにしても、高額な費用がかかっています。このような費用をかけているので、研修実施によってどのような成果が出たのか、その結果も気になるところです。

 

弊社が行った研修で、その成果をコンピテンシーで評価したケースを紹介します。

 

昨年、某病院(250床程度)で、看護師長のマネジメント能力のアップを目指して、課題解決研修を実施しました。

研修方法は、各看護師長が自部署の課題を決め、その解決に向けて、情報収集分析、原因分析、解決策の立案、実行そして評価の一連を研修で行うものです。その評価方法として看護師長の「コンピテンシー評価」を用いました。

 

コンピテンシーの考え方は、「人は、知識や技術だけではなく、価値観や特性によって行動を起こすものである」という概念を前提に、高い業績・成果につながる行動特性をコンピテンシーと呼んでいます。

 

もともと、コンピテンシーは、ハーバード大学のマクレランド氏が提唱した心理学的用語です。研究の基礎となったのは、外交官の「採用時のテスト成績」と「配属後の実績」の相関関係を調査した結果、「学歴や知能は、業績の高さとさほど相関はない」「高い業績を上げる者には、いくつか共通の行動特性がある」と判明したそうです。その「高い成果を上げる従業員に共通する行動特性」をコンピテンシーと呼んでいます。今日では、人事部門で使われる用語となってきているのは、ご存じの方も多いと思います。

 

看護師に対する評価の中でも、看護師長などのマネジメント層に向けてコンピテンシーの評価表が検討されており、病院の人事評価への導入が進んできております。

 

今回は、問題解決研修の評価の1つであることと、リーダーシップを発揮して改善活動を行い、成果を出すことを目的にしていたため、看護師長のコンピテンシーとして次の14項目を評価指標にしました。

(情報活用、指導力、管理責任、創造性、革新力、状況判断、問題解決、意思決定、交渉・折衝、業務に関係する葛藤の調整、企画・計画、組織力、危機管理、経営的視点・戦略性・病院管理)

 

この病院では、事前に自己評価と他者評価(看護部長等)のコンピテンシー評価をで行っており、「問題解決力」と「経営的視点」において、結果に格差がある(自己評価が高く、点数が低い)と示されていました。

約半年をかけて実践型の研修を行い、コンピテンシー評価の結果としては、課題であった「問題解決力」、「業務に関係する葛藤の調整」、「経営的視点」などの項目に改善が見られました。

今回は、研修成果をあるべき看護師長の行動特性と結びつけて評価しましたが、今後は、行った研修が経営数値に結びついていることも示しながら研修を実施していきたいと思っております。

                                 

田中智恵子