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病院の課題についてお話を伺っていると、「うちは事務が弱い」というコメントをいただくことがあります。また、提案の際にも、事務職員の教育についての展望を盛り込んでほしいと求められるケースが、ここ最近続いています。
そこで、ふと考えることがあります。「事務が弱い」とは、一体どういうことなのでしょうか。
まず大前提として、世間一般にイメージされる「事務」と、病院において求められる「事務」の機能には、大きなギャップがあるのではないかと思います。
一般的には、「事務=書類仕事」「決められたルールの中で、業務を正確かつ着実に進めていく仕事」というイメージが強いのではないでしょうか。
しかし、病院の事務業務は、こうした「書類仕事」という枠組みには収まらないものが非常に多くあります。
例えば、毎月の患者数や収益を集計し、報告書を作成するところまでは、一般的にイメージされる事務の仕事の範囲だと思います。
では、実際の病院の事務はどうか。たとえば会議の場面で・・・
「前月の入院患者数は前年同月比で10%減少しています。原因としては、救急車の受け入れ件数が減少したことが大きいと考えられます。感染症による受け入れ制限はすでに解除されていますが、救急要請件数が充分に回復していません。このままでは収益への影響が大きいため、対策を講じる必要があります」
このように、単純に件数や割合の増減を報告するだけではなく、「なぜ数字が変化したのか」という要因を分析し、さらに「では、どうすればよいのか」という解決策まで考えることが求められます。
病院の事務には、一般的な「事務」のイメージを超えて、データを読み解き、課題を発見し、現場に働きかけ、改善につなげるところまでが求められているのです。
こうした役割まで求められることを理解した上で、病院の事務職として入職する人は、決して多くないのではないでしょうか。むしろ、こうした実態をあらかじめ知っていたのであれば、「別の業界の事務職」を目指していた人もいるかもしれません。医療における「事務」は、一般的な事務職とは少し異質の存在な気がしております。
では、話を戻して、「事務が弱い」という言葉の真意は何なのでしょうか。
私の経験上、多くの場合、それは「発信力」を指しているように感じます。
ここでいう発信力とは、単に情報を伝えることではありません。データや情報をもとに現状を整理し、課題を明確にした上で、「改善する必要がある」というメッセージを現場に発信し、実際の行動につなげる力のことです。
経営に課題を抱えている病院では、事務の発信力が弱いケースが多くあります。コンサルタントの視点から見ると、その一つの指標となるのが、事務が医師をはじめとする現場とどれだけコミュニケーションを取れているかです。
実際に医師へヒアリングをすると、「この手技は儲かるのか」「診療報酬改定で、新たに算定できる加算はないのか」といった質問が出てきます。
つまり、現場は数字や情報を求めています。
そして、それに答えられる立場にあるのが、基本的には医事課をはじめとする事務部門です。そのため、「事務が弱い」という言葉は「医事課の発信力が弱い」という意味で使われているケースは多いように思います。
さらに「事務が弱い」事象を深掘りしていくと、今の病院が抱えている課題について、よどみなく説明できる事務職員は、どれほどいるでしょうか。
毎月、患者数や収益などの数字を報告していても、その数字が何を意味しているのかまで理解した上で、現場に説明できているでしょうか。
「事務が弱い」という状態は、単に発信力が弱いというだけではなく、「事務職員の病院経営に対する解像度が低い」と捉えることもできるのではないでしょうか。
そして、まさにそこが、我々コンサルタントが価値を提供できる領域なのだと思います。
我々が出すアウトプットは何も特別なデータは使っていません。病院から受け取ったデータとオープンデータが基本です。
数字から何を読み取るのかをアウトプットを通して学んでいただくことで、今までただの数字の羅列に見えていたものが意味合いを持って感じることができるはずです。
事務の強化は一朝一夕ではかないませんが、収支改善の過程で強化されていくものであると思っております。
花井聖菜