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「経営改善活動促進の仕掛け」 ~医師の評価~

UPDATE

2023.01.27

これまで多くの医療機関の経営改善に携わってきた。経営改善というプロジェクトにおいて、我々コンサルタントに期待される役割は、「改善すべき課題を定め、実行の優先順位を付ける」「改善活動自体の実行サポートをする」「成果(金額など)を出す」など様々である。この一連の活動の中で、特に成果を出すためには、まずは、全病院的な活動として、皆で一緒に頑張ろう!と盛り上げ、組織が動くことが重要となる。そして、意外とこの手の雰囲気改善で一定の成果が出るものである。当然ながら、これらの活動に医師のリーダーシップや協力が不可欠なのは言うまでもないのだが、組織というものは簡単にはいかない。一緒に頑張ってくれない医師(無関心な医師、反発する医師などなど)が存在するのも確かであり、この存在が経営改善の活動を鈍化させたり、ボトルネックになったりするケースは多く存在する。結局、あれこれやっても「医師が動いてくれない」(コンサルタントとしては、医師を動かすもの仕事であるのだが・・・)ことで期待効果まで到達することが難しくなるのである。

ある病院(300床クラス;急性期一般入院料1+回復期)において、経営改善の一環として、医師の評価を実施し賞与に反映させる取り組みを行っている。この病院は、院長のリーダーシップにより、改善活動自体を評価して、その評価結果を個人に還元させる仕掛けである。具体的には、医師の働きを多角的に評価して、その結果を賞与に反映するというものである。評価軸は、売上げ・粗利などの結果指標から、救急入院件数/受入率や紹介件数などのプロセス指標まで、予め設定してする。そしてこの評価の中には、ユニークな指標として他職種複数名からの評価(コミュニケーションの取り方、仕事のやり方/指示の出し方など)もあり、これらに重みづけをして総合評価をランキング形式で半期ごとに集計し、賞与に反映させるというものである。賞与への反映の仕方は、業績に比例して求められる賞与原資をランキング順に配賦していくというものである。ちなみに、この病院は、医師のみでなく給料の高い職種、または役職者からこの手の評価を行っており、いまでは当事者は評価結果を気にしており、意識改革や行動改革につながっている。

この活動自体は、経営改善という大きな活動において、救急断り削減などの各種活動による患者/売上アップや職場雰囲気向上への寄与を考慮すると意外と大きいものであると実感する。評価されると動き方は変わるものであり、なんだか組織も活性化されていく気がする。いつまでも医師の退職を恐れ、医師にものを申せないとは言っていられない。守るべきものは何か!?を考え、病院内部からの改善によりより良い労働環境を作ろう。

 

坂尾英明