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民間の医療保険の加入について

UPDATE

2023.12.14

先日、社内で民間の医療保険に関する話題が出た。その際、メンバーの中には医療保険に未加入の人もいた。その理由を尋ねてみると、「高額療養費制度があるから」とのことだった。

高額療養費制度は、医療費が一定の金額を超えた場合に、その超過分を自己負担せずに済ませるための仕組みである。言い換えれば、この制度を利用することで、月の支払い上限額以上の医療費については自分で負担する必要がない。

この制度を利用することで医療保険に入る必要性が低いのか、ざっくりと試算して検証してみた。(なお、その正確性は保証できないため、ほんの参考程度でご覧いただきたい)

【検証方法と前提】と【結果】の2点に分けたので、結論だけ気になる方は【結果】のみご覧いただければと思う。

 

【検証内容と前提】

①【検証内容】

医療保険に入った場合と入っていない場合の入院医療費の自己負担額を比較する。

【前提】

<対象者>

60歳で肺ガン(手術あり)になる想定で、それまで医療保険を適用するような既往歴はないものとする。また、標準報酬月額は28万~50万円の人とする。

<医療費>

試算する医療費の対象は、入院医療費(室料差額などの自費部分なし)のみとする。

1日当たりの自己負担額(3割)は1日単価18,500(円)×入院日数21.1(日)=390,350円とする。単価と日数は、「医療給付実態調査;令和2年度(厚労省)」と「患者調査;令和2年(厚労省)」の肺ガンの平均単価と平均在院日数を参考にした。そのうえで高額療養費制度を適用すると自己負担額は90,442円になる。

<医療保険>

入っている医療保険は、ある保険会社で実際に提供されている商品とする。具体的には、入院1日10,000円給付され、かつ、手術に対しても200,000円支給される医療保険(入院一時金や外来診療に対する補償は手術以外なし)である。そのため、医療保険給付10,000円×21.1日+200,000円(手術)=411,000円である。

②【検証内容】

①の比較の上で、医療保険に入った場合と入っていない場合の自己負担の総額(医療費の自己負担額+医療保険代)を比較する。

【前提】

医療保険の月払保険料は2,480円(保険料払込期間は終身まで)であり、31歳から入ることとする。そのため、医療保険代は31歳~60歳の30年間で2,480円(月)×12(ヶ月)×30(年)=892,800円である。

 

【結果】

①医療保険に入った場合と入っていない場合の入院医療費のみの自己負担額は・・・

【医療保険入っていない】90,442円

【医療保険入っている】 0円(むしろ411,000円―90,442円=320,558円のプラス)

確かに医療保険に入っている方が自己負担額は小さい(むしろプラス)ではあるが、入っていない場合も9万円程度とそんなにびっくりするような額ではないため、個人的にはわざわざ時間を割いてまで入る必要はないのではないかと思った。ついでに、前提の所でも書いているが、高額療養費制度を適用しない場合の自己負担額は390,350円であるため、医療保険給付金額は高額医療費制度を知らない人が計算するとリーズナブルな額であるということも気付いた。一方で、むしろそれまで払ってきた医療保険代を合わせると医療保険に入らない方が得なのでは・・・?とも考え、②の試算をした。

②医療保険に入った場合と入っていない場合の自己負担の総額(医療費の自己負担額+医療保険代)は・・・

【医療保険入っていない】90,442円

【医療保険入っている】 572,242円(892,800円―320,558円)

圧倒的に医療保険に入っている方が自己負担の総額が大きいということになった。これなら、医療保険には入らないという選択により納得感を得た。

 

これまでの試算はかなり限定的なパターンを想定しており、もちろん実際には医療保険に入っている方が得だったとなる場合も多いだろうということは述べておく。

そのうえで、ざっくりと試算してみて感じたのは、生きていく上では世の中にある様々な制度を知ることや理解すること、自分なりに検証することが重要だなということであった。これらを実行するには仮説思考を含むロジカルシンキングが必要だと思うので、引き続きプライベートでも訓練していきたい。

 

河崎実涼