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患者家族として①~退院調整から思うこと~

UPDATE

2018.06.14

私の身内(文中では患者と表現)が、少し大きな病気を2つ抱えていたため、1年間にわたり大病院(いわゆる急性期病院:DPC)でお世話になり、今月ようやく自宅退院した。普段は、コンサルタントとして病院に関わることが多いのだが、今回は患者家族として病院と接した経験をお話する。いくつか話したい内容があるのだが、今回は退院について。退院調整に要した期間は約5か月。退院調整の開始って意外と早いのだなと思いながら、カンファに出席。この時点の患者状態をお話すると、認知無し・歩行可能(筋力低下はあるが…)。飲み込みの力が弱く、“気管切開・経腸栄養”で要リハビリの介護度3相当であった。

■ カンファ(第一回)
退院調整の担当者(MSW・看護師)に「退院先は、どうお考えですか?」と聞かれる。心の中で、『そもそもどういう選択肢があるのか・・・?』と思いながら、やはり、患者本人の気持ちを汲むと自宅であろうと思い、「まずは自宅、難しいようであれば、逆にどういう退院先があるのか?」と質問をする。今回のカンファは病院サイドも退院先に関する家族の意見を聞きたかったようで、それ以外の選択肢は、患者状態を見ながらまた検討しましょうということでカンファ終了。急性期病院故にやや退院を急いでいる雰囲気を大いに感じた第一回目のカンファ・・・

■ カンファ(第二回)
前回カンファから1ヵ月半経過。患者状態は、たまに腹痛あり。その他良くも悪くも変化なし今回は、自宅退院以外の選択肢に関する協議。退院先は自宅以外に病院か施設の中からいくつかあるのだろうなと思いつつ。よくよく聞いてみると、
① 病院の選択肢
治療は多少あるものの急性期のステージはとっくに過ぎている。疾患タイプから回復期も対象外。療養かというと“気管切開・経腸栄養あり”のため、積極的な受入れ施設は非常に少なく、近隣には無い。そして、喉のリハビリニーズがあるので療養に入るような患者状態ではないとのこと。確かに、一度療養病院を見学に行ったが、私自身も療養は違う気がした。じゃあ地域包括はどうか!?と投げかけるも、皆あまりピンと来てない様子・・・仮に入れても期間限定、リハビリの制約ありだな…と。
② 施設の選択肢・・・特養・老健などの施設は×。民間の施設は?
介護保険適用の施設か民間(老人ホームなど)に分け話が進んだが、施設については患者介護度が3と比較的高いにも関わらず、“気管切開・経腸栄養あり”がネックとなり、難しい旨が伝えられた。あとは民間の施設か・・・。私は、医師に対し「患者状態に合った退院先はどこでしょうか?」と質問すると「やはり自宅かと」と。それは、“自宅が良い”ではなく“ほかに無い”という印象。一応、老人ホームなどを少し探しましょうということでカンファ終了。

■ カンファ(第三回~)
その後、民間の有料老人ホーム探しなども含め、数回カンファを行った。老人ホームは、患者の状態を考慮し、看護師常駐などの希望を叶えようとするとと非常に高額な上、自宅退院で訪問看護を活用する方法との違いが明確に分からなかったため却下となり、自宅退院で進めるという結論になった。

結局、患者の状態が、医療度の低さから医療/病院では対象外であり、介護/施設からしてみたら医療の管理(“気管切開・経腸栄養”)があることで受入れ対象外となっているのである(実際には受入先はあるが少ないようである)。介護/施設など、専門職がいる場所が避ける行為を自宅でやらなければならないというリスク。なかなか難しい問題であると感じた。その後、具体的な退院後の生活をイメージできないまま、退院日の目安が設定され、退院後のサービス内容・頻度を誰がどう決めていくのか“ふわっ”としたまま時間が経過していく。そして、食事の問題を支援してくれる栄養指導は退院直前に設定され、ケアプランは作成されず、家屋調査的なもの無く、自宅退院をした。
私の職業柄、退院オペレーションに改善の余地ありだなと思いつつ、近年よく耳にする地域包括ケアシステムは、今後、具体的にどのように構築し運用されていくのか?非常に興味深いところである。
最後に、今回の入院全般を通して、患者家族としての満足度は決して低いものではなかった。これは、急性期の段階における治療がしっかりしていたためであるということを補足しておく。

坂尾英明