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“回復期リハビリテーションのFIM利得向上”

UPDATE

2019.04.11

皆さんもご存じの通り、回復期リハビリテーション病棟におけるアウトカム評価が行われるようになった。この評価は“実績指数”という指標で評価されるのだが、その計算式の分子にあたるFIM/機能的自立度評価表の得点(計算式上では入棟時と退棟時のFIMの差分=利得)を高める活動を行う医療機関も増えているのではないだろうか。ちなみに、このFIMは運動ADL13項目(食事・整容、更衣などのセルフケアから排泄関係、移乗、移動に関するもの)と認知ADL5項目から構成されており、それぞれの項目を7段階評価して点数化するものである。なお、1週間以内にFIM得点が10以上低下するケースは急性憎悪とみなせる。そういったADL評価表である。

では、このFIM利得を最大化させるためにどうするか?①入院/入棟時、②入院中、③退院時に分けて考えてみる。ゼロベースで考えれば、治る可能性が高い人を選んで受け入れるというのもあるが、医療機関の性質上、患者を選ぶという行為は無いものとする(実際にはあるのかもしれないが・・・)。まず①入院/入棟時。入院/入棟後のFIMスコアのチェックは通常だと初日、せいぜい2日目までであろう。急性期後の日数が浅いほどFIMスコアの変化は大きい故になるべく早い段階のチェックが望ましい(早いほどFIMスコアが低くなる)。しかしながら実態はどうであろうか?リハビリスタッフにもよるのだが、入院/入棟後数日経過の後にチェックしているケースもあるようだ。よって、入院/入棟時のFIMチェックの早期実施の取り組みが考えられる。・・・その他、リハビリスタッフの評価方法のバラつきによるものもあるようだが、採点基準もある程度明確なため除外している。

次に②入院中。ここはどの病院でも積極的に実施しているとは思うが、たくさんリハビリを提供するというのがあるだろう(たくさんリハビリを実施すると回復するのかという議論は、各種文献を参照していただきたい)。もちろん一日あたりの上限単位は決まっているのだが、ベッドサイドで看護師が生活リハを実施するなど取り組んでいる医療機関は多い。最近では、FIM項目毎にフォーカスし、低値となっているFIM項目を重点的に伸ばす取り組みをやる。例えば排泄チームなどを立ち上げている医療機関も少なくない。誤解の無いように、これはFIMスコアを上げたいというよりは、在宅復帰のために排泄行為の自立は非常に重要ということであるためである。

最後に③退院時。FIMの値の変化は入院期間が長くなればスコアのカーブもなだらかになっていく。リハビリの改善度合いと退院のタイミングの関係はどうなっているのか?ある病院では、退院直前のFIMスコアは、その2週間程度前のスコアと比較しても一定数以上の伸びが認められているケースが散見された。つまり、まだリハビリを継続実施すれば良くなるのではないかということである。実際、リハ医やリハビリスタッフが更なる改善の可能性を踏まえ、入院期間の変化させるケースもあるようだが、徹底している医療機関は少ないのではないだろうか。この退院基準作りは重要である。なお、回復期リハビリテーション病棟の繁忙期は待機患者の早期受入れも重要であるため、入院期間を延ばしてまで改善を期待するのか、新規患者の受け入れを優先するのかは各医療機関の方針にもよるものだと思う。

結局のところ、このFIM利得は、患者回復がしっかり認められれば診療報酬で評価するということである。医療機関の広告規制上、広報には注意が必要だが、しっかり回復出来るリハビリテーションとしての差別化と外部への情報発信は、今後ますます重要になるのではないか。

坂尾英明