STAFF EYE'S

スタッフアイズ

STAFF EYE'Sスタッフアイズ

原価計算

UPDATE

2020.06.26

“原価計算”。

経営改善の類のプロジェクトを実施すれば、ほぼ毎回実施する分析作業である。自分自身としては、今回久しぶりにクライアントと協力しながら自らの手を動かして実施した。やはり数値を当てはめていくたびに見えないものが見えてくる、イメージ/仮説通りの結果が出てくる、この感覚は何とも言えない喜びのような気持ちがある。これは分析の醍醐味ではなかろうか。

さて、経営状況を図る上での指標は、総務省も示している通り多くの指標が存在する。弊社も当たり前のようにそれらの指標を活用し、ベンチマークなどをしながら経営課題を見つけていくのであるが、やはり部門別や診療科別の単位で採算性を押さえなければ改善課題は具体化されない。この時に原価計算は有効な分析の一つである(今回の集計単位は診療科別×常勤/非常勤別×入院外来別とした)。昔から原価計算は、費用の配賦方法次第では医療者から結果に対するクレームが入り、苦労して実施したものも使えなくなってしまうというようなこともよくあったと聞く。なので、その配賦するための基準を精度高く仕上げていくというよりも、その目的を明確にし、どこまでの精度で行うかはある程度決めておく必要があるのだと思う。

今回の原価計算の目的は、1.病院の将来/中長期計画に向けた病床機能/診療科再編成のための意思決定、2.各部門/診療科の問題点把握、3.病院全体スタッフへのコスト意識の向上 の3つである。そのうえで作業に取り掛かる。詳細作業ステップは割愛するが、近年医療機関における各種情報の利活用が進化しており、とても円滑に滞りなく作業が進んだ。配賦に関しても、各部門/診療科に直接配賦出来るもの(部門固有費)とそうでないもの(部門共有費)に分け、そうでないものは配賦基準に従って配賦していくのであるが、それぞれの費用項目には必ず目的があり、その目的を押さえれば、自ずと配賦基準は見えてくる。この費用が大きければ大きいほど目的は明確である。目的のないコストは存在しないのである。

こうして粛々と作業した結果の見方としては、直接配賦された医師/看護師などの人件費での採算性、コメディカルや事務などの横断的スタッフの人件費までの採算性、さらに医薬品や診療材料など医療原価まで含めた採算性・・・といった具合に、当該部門への費用配賦が明確なものから段階的に見ていく。だいたい経営が芳しくない病院は、この段階である程度の部門/診療科別採算性のメリハリがついてくる。非常勤/外来は、医療原価まで含めると多くの診療科がマイナス。常勤医/診療科も採算/不採算に始まり、各診療科の収支構造…外来がマイナスだが入院で稼ぐ診療科、またはその逆というようなところが明確に見えてくる。この原価計算を見ながら、改善した場合のインパクトの計算も容易になるのである。こうして原価計算により経営/収支構造が立体的に見えてくるのである。

包括払いが主流となる中、病院経営におけるコスト意識の重要性をあらためて感じる。

 

坂尾英明