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外来が長引く-看護師長のマネジメント研修から得られた原因-

UPDATE

2020.09.10

外来時間のコントロールとして、予約制の導入が一般的になっています。待ち時間の改善効果をも見据えて導入されたこのシステムですが、それでも定時に終わらない。そのような問題を抱えている病院は多いのではないでしょうか。

 

 

現在、私は、市中病院の師長育成として、問題解決研修を実施しています。その病院の外来の師長が出した課題がまさに、「外来が定時に終わらない」でした。

今回は、その課題を抽出するまでの経過と、見えてきた原因について紹介します。

 

―研修1回目―

師長の思い

    • 外来が長引くのは患者数が多いからであり、予定枠以上に患者を入れているからである。
    • 特に整形の外来が長い。処置も多ければ、患者が高齢者なので、身支度など時間がかかる
    • 外来時間が長引くのは、仕方ない。患者を減らすしかない。

 

長年の課題ではあったが、外来の医師もスタッフもあきらめモード。師長はこの課題に取り組むことさえ、後ろ向きに感じていました。

 

師長にお願いしたこと(データ収集とそのデータから言えること)

『では、整形の医師4名だけでいいので、1週間、どんな患者が何人来て、どんな治療を何分したのか、データを取ってみてください。』

(Excel表を作成し、患者ごとに収集するデータベースを一緒に作成)

 

―研修2回目―

師長の第一声

 『もう大変でしたよ。スタッフにデータ収集をお願いしたら、「こんな忙しい時にそんなの出来ないです。師長だけでやってくださいよ。原因は患者が多いからに決まっているじゃないですか」』と言われたとのこと。

(それでも、後半はスタッフも手伝ってくれたようですが・・・)

 

データを取ってわかったこと

  • 患者一人当たりの診察時間はどの医師も平均5分
  • 医師一人当たりの患者数は20-30名程度
  • 定時で終わらない医師の1人は、外来時間の50%超は診察以外の時間であった。診療以外の時間には、カルテ記録、書類作成(当日作成してお渡しする診断書、診療情報提供書)、患者の検査結果待ち時間等が含まれている

 

患者数が多いと思っていましたが、実は、診療時間の半分は、診療以外の時間であったことが明らかになり、

その中でも着目したのは、この医師には、医師事務補助者がいるが、全く活用していないということがわかってきました。

 

 

その医師のカルテや書類作成法を見ていると、書いてはdeleteするなど効率性も悪いのではと感じていたとのこと。

60歳過ぎのベテランの医師であり、こだわりがあり、他人には任せられないと思っているようです。

医師事務補助者を活用している医師とは効率性が異なると思われ、今後、さらにデータを取り深掘りをして改善をすすめていきます。

 

今回のまとめ

日ごろ私たちは感覚的に「こうではないか?」から「絶対にこうだ」「だから無理」というように、現状を硬直した認識で捉えがちになります。

研究のような緻密なデータを取らなくても、データを取ることにより見える世界が変わることはよくあります。

医師事務補助者の活用は診療点数にも加算されていますが、活用の成果は今後の課題なのかもしれません。

田中智恵子