社長ブログ

by 遠山 峰輝

BLOG遠山峰輝のつづる日常

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    2023.01.15

  • コロナ補助金問題の本質

    会計検査院は、コロナの病床確保事業に国は二年間で3兆円を超す補助金を医療機関に投入したと公表した。国民医療費が年間で約40億円とすれば、3-4%が補助されたことになり、医療機関からすれば売り上げがその分増えたということだ。結果、赤字から黒字に転換した病院が多く存在することだろう。多くの病院チェーンで過去最高益となったのが実態のようだ。この空床確保補助金は、本来は患者が入院しているが、有事のコロナ対策のためにわざわざ病床を開けたことに対する補填であるべきだ。そのために通常入院させていた場合の単価よりも高い金額を空床確保料として設定することは理にかなっているといえる。ところが、問題は、そもそも経営が思わしくなく、病床利用率が低く、空いていた病床に対して補助金がばらまかれたということだ。通常は空いているのであるからスタッフが十分でないのは当たり前であろう。通常患者が入院すると一日4万円程度の収入しか上がらない病床に対して、コロナのために確保していると申請すれば、一日7万円もの補助金がもらえるのだから、言葉は悪いが、笑いが止まらないだろう。

    さてこれらの補助金の細かいインセンティブシステムや運用の問題に関してここで意見を述べるつもりはない。話題にしたいのは、病床や医師などの医療資源が「薄く広く」分散されているという日本の医療の最大の問題点が、正に今回のコロナの問題で露呈されたということである。ご存じの方も多いと思うが、日本の人口あたり病床数や病院数は世界の中でも突出して多い一方、医師数などスタッフは少ない。つまり病床当たりスタッフが少ない状況で、病院や病床が全国津々浦々広くばらまかれているのが実態だ。これらを踏まえると、今回の補助金の問題は、その本来の受け入れ能力を見極めることなく、薄く広く分散された病院のほとんどにコロナ受入を要請し、そこに補助金を出したことにある。正に補助金のばらまきというに相応しい現象であるが、皮肉にも、これはお金の無駄遣いを起こしただけではなく、実際の感染を広げた可能性もある。感染対策の基本は、隔離であるにも関わらず、近くのどこの病院にも感染患者がいるような状況を作った。つまり、補助金だけではなく、病原菌も同時にバラまいたような状況である。

    どう考えても、今回あるべきコロナ対策は、受け入れ病院の「数を増やす」ことではなく、数を絞りこみ、そこに「資源を集中」すべきであった。そうすれば無駄な補助金のばらまきも無かったはず。また、医師や看護師もスキルも高く(或いはラーニングも生じ)、結果対応の質も上がったであろう。また上述のように感染の広がりを抑える効果もあったかもしれない。例えば都立病院は全部で14存在するが、そのいくつかでもコロナ専用病院にすべきであった。なんのための自治体病院なのか?有事に活躍するのが自治体病院ではないのか?民間に任せて補助金と病原菌を同時にばらまいたと言っても過言ではない。

    さて、今回のコロナの問題は一つの事例に過ぎない。繰り返すが、問題の本質は、薄く広く分散された日本の医療の提供体制にある。人口減の時代に、皆仲良く少しずつ分けましょう!はもうやめないといけない。これは、必要な閾値を超えることがなく、全て無駄になる。「集中化」、これがキーワードであると思う。

    遠山峰輝

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